華碩電脳股X有限公司 (ASUSTek社) メインボード製造工場見学


 メインボード(マザーボード)を製造するASUSTek社(私はエーサスと呼んでいましたが、現地の人はアススと呼んでいます)は、日本で最も人気のあるメインボードの製造メーカーとして知られています。
同社は、5年ぐらい前(アメリカ国内は不況だった)からアメリカから帰国してきた中国人技術者たちを核にパソコンのメインボード製造で頭角をあらわしました。
現在、パソコン需要の追風にのって設立以来、生産・売上げを急速に伸ばしています。
台湾(つまり世界で)ではFIC社(台湾)に次いで生産量は2位とのことです。
製品の品質についても、インテル製メインボードをOEM供給するなどPC業界においても確固たる地位を占めています。
今回、訪問した製造工場では 管理職が COMPUTEX TAIPEI'98 に出払っていて、応対・案内してくれたのが現場技術者だったことは幸運でした。
 
バスの窓から見えるASUSTekの工場ビル ASUSTek の工場ビルの全体像
写真1:バスは高速道路をおりて、のどかな田舎のような風景のなかを行くとありふれたビルが建っている。
このビルがASUSTek社のM/B工場なのだ!
写真2:小雨の降るなか、バスはビルのtリ口で止まった。予想を裏切る小さい規模の工場だ。
派手とはほど遠い質素なたたずまいは以外だった。

 会社の理念や沿遷と製品についての説明をビル1階の会議室で受けた後、階上にある組立て工場を見学しました。
同社の社員たちにとっても忙しいさなか、あたたかい歓迎をうけて感激でした。
私たち訪問者は、案内されるままに工場内をわくわく見学したのですが、後でガイドの陳さんの話では、こんなにまでも製造工程を自由に見せてくれたのは初めてだとのことでした。通常は、ゲストだけが見学してガイドや通訳はシャットアウトであるとのことですから、写真撮影も許してくれたのは破格の待遇だったようです。
九十九電機さんありがとう!

 開発部門のエンジニアは、このビル内にかんづめになって仕事をするので、地下室には彼らのために水泳プールが用意されているとのことでした。
基板製造工程は、ビルの2階以上にある工場の広いフロアーをすべて使っています。
大同股X公司のメインボード組立工場と同様の工程のレイアウトで、入り口のドアを入ると防塵のための2重ドアや靴に付着したゴミを持ち込ませないための設備があります。

************  大同股X公司と華碩電脳股X有限公司のメインボード組立工場の工程説明  **********

  写真は、華碩電脳股X有限公司の工場内で撮影したものです。
 

印刷ロボットとSMTの写真 基板に部品を取りつけるロボット SMT
写真3:白い丸いドームの機械が印刷機だ。

エッチング・穴あけ加工済みのメインボード基板(ほかの工場から搬入?)に 精密なシルクスクリーン印刷機で表面にブランド名・記号・設定情報が印刷されます。
印刷後すぐに、自動機械と目視による検査が行われます。
印刷からデバイス取付は、すべて自動で行われる。

写真4:これがSMT(部品装着ロボット)だ。

チップセット・抵抗・コンデンサー等のデバイス類が、ミシンのような速いテンポで装着されてゆきます。
   PC雑誌でとりあげられるCPUチップセットもこの工程で装着されますが、ガムテープよりも大巻きのテープに整然と並んではりつけられていて、順次「ロボットの手」によりはずされて装着されてゆきます。
 装置右上は制御用ディスプレーで、その下はTVカメラのモニター(取付位置の確認用)だ。
 

 この工程のロボットは、パナソニック(松下)とシーメンス製の物が使われていました。
高い精度と信頼性が要求されるようで、パーツ・デバイスの装着はロボットに組込まれたビデオカメラで取込んだ基板上の穴の写真を、高速画像認識処理によって正確に位置決めを行い、すばやく部品の装着が実行されてゆきます。
SMT(部品装着ロボット)の右上についている小さなモニターに、基板上のターゲットの部品の穴が、ビデオデッキの早送り画像のようにすばやく映し出されてゆきます。(ブルーに見える画像は基板上の穴を拡大した画像です)
   今回、ツアーに参加した「ファースト」の橋本さんは、この画像処理の装置を 製作する会社で研究をしておられるそうで、食事のときに説明をしてもらいました。また、鈴鹿富士ゼロックスの坂下さんによると、パーツ装着用ロボットにどの会社の製品を使っているかによって、ラインの生産能力はおのずと決まるそうです。
担当者に製品の不良率を尋ねたところ、臆することなく教えてくれたそうで彼らは自信をもっているようです。

.基板にパーツ類を装填する作業は、すべてロボットで行うわけではなくて、作業員の手作業によっても行われます。SIM,DIM,等のメモリー基板のソケット類は人間が装着していました。
 また、パーツ・デバイス類がすべて基板に装着された後に(ハンダが熱で溶かされて煮えたぎっている鍋が組込まれている)ハンダ付けマシンにベルト・コンベアーで送り込まれます。
  この装置は5mぐらいの長さで、ハンダ付け前に基板を3段階で加熱して、デバイス類に加わる熱ストレスが最小限になるように配慮がされているそうです。
 
 

ハンダ付けを終わった基板がでてきたところの写真 目視検査でパスしなかった基板の手直し作業の写真
写真5:ハンダ付け装置から製品がベルトに乗って
出てくるところを撮影したもの。手前の作業員は、ハンダ付け後の最初
の検査をしている。○は左、×は右のラインへ振り分ける。
写真6:ハンダ付けの手直しも発生する。その×ラインだ。
写真5のベルトの右側にあり、目視検査と手作業だ。

.基板のパーツ・デバイスがハンダ付けされると、検査工程に移ります。
検査の作業員は若い女性が多く、目視検査や通電テストなど手早く処理されて行きます。アッセンブリ工程よりも検査工程の方が人員が多いようです。
日本の製造工場でよくあるQC(品質管理)活動も実施されているようです。随所に工程の(不良率管理のための?)管理表が貼ってあったり、技術最先端の(半導体製造工程を予想していたのですが・・・)作業工場ではなくて日本のによくある中小企業の作業工場そのもので、なんだか親しみが持てます。
   古い工場を改造して作った工程ですが、整然としています。働いている台湾の人たちの顔も日本人にそっくりだし、真剣なまなざしを見ていると日本の工場を見学しているような気もします。
この工程をパスした基板は通電試験を受けます。
 
 

基板の検査工程 1 基板の検査工程 2
写真7:マザーボードの全数にすべての機能を検査する工程。
インターフェースの検査をしているようだ。
写真8:写真7のテーブルの後ろでは、グラフィック関連機能の
テストのようだ。

 
基板の検査工程 3 基板の検査工程 4
写真9:検査をパスすると、静電気防止のピンクのクッションに
はさんで、箱に詰められてゆく。
写真10:延々とつづく検査工程。
検査用PCはLANでネットワークされていた。

すべての製造・検査工程をパスした基板は、出荷または次工程に配送するために専用の箱にぎっしりと収められてゆきます。秋葉原の店頭でも見られるバルク品の基板がぎっしり入れてある、段ボール箱と同じ物です。

************  大同股X公司と華碩電脳股X有限公司のメインボード組立工場の工程説明 おわり **********
 

M/B(メインボード)製造ライン

 メインボード組立工場の入口を入って最初に説明を受けたのは、ハンダ付けに使うペーストについてでした。500mLのペットボトルぐらいの円柱形の容器に入った状態で納入されるとのことで、カーキ色をしています。
これを、70℃ぐらいに1日間保温するのが重要なポイントだそうです。この容器をコンビニストアーによくある缶コーヒーを暖めるためのガラスケース(4方の壁がガラスでできていてる缶ウォーマーのことです)に入れてゆっくり加熱するとのことです。
 このペーストを基板に均等に塗り、部品を取付けて最後にハンダ槽で一気にハンダ付けをするのですが、ペーストについてのノウハウが重要であることを知りました。

 おおざぱに言って、メインボードの製造工程は大同股Xの工場で見たものと機械、部品取付ロボット(SMT)、製造工程もそっくり同じです。女性の作業員が多く、規模も同程度です。この工場の工程は2ラインで、製造プロセスの試験用のラインだそうです。
品質管理も行われていて、徹底して製品の不良率を下げる改善策やラインの組みかたを試験するための試験場のような位置づけだそうで、本格生産する工場では、この工場と同じ製造ラインが並列に複数あるだけとのことです。
大規模な生産ができる工場は、台湾国内だけでなく中国大陸にもあるそうです。

 作業員の仕事の多くは、基板についての工程ごとにする検査です。検査は、特に部品のアッセンブリーが全部終わった後に行う動作テスト・機能チェックに重点がおかれていることが、人員配置や器材の重点配置の状況からもわかります。そして、検査員のいるラインでは、テスト・チェックに使うパソコンがLANですべてつながっていることが、机の下の20本ちかくあるケーブルを見てわかりました。

基板上の BIOS,E-IDE Controller,Serial/Pararell Interface ,AGP-BUS, などすべての機能について製品の全数検査を実施していました。


 基板表面のスクリーン印刷機、パーツ・デバイスを基板に装着(表面実装)するロボットの工程、生産ラインの人員配置、人数、ベルトコンベアーの流れるスピード、等・・・・。大同股X公司とそっくり同じなのには苦笑しました。
見学した2社ともにメインボードの基板そのものの製造(エッチング・穴あけ)は、別の工場でやっているようです。工場の規模や設備の関係で、同一敷地内に、併設するのは難しいのでしょう。

 大同股Xの工場でもそうだったのですが、ASUSTekでもATタイプのメインボードを目の前で製造していました。すべてATXに移行してしまったと思い込んでいましたが、今でも生産していることがわかって安心しました。
 

ASUSUTek社工場内を案内してくれた工程管理者の方は質問に答えてくれました。
・同社のM/Bで採用されているコンデンサーが、他社のものより大きいのは信頼性を優先させているためだそうです。
(筆者注:パーツの小型化は基板への実装面で有利ですが、温度特性と寿命も両立しなければなりません。
ねらった信頼性を保持するための研究・努力が日夜なされているようです。)
・Peitium II 搭載のAT基板(インテルは、Slot 1 +ATX を普及させたいのだが・・・)をなるべく早く製造・発売したいが、インテルとの友好関係についての配慮もあり時期をうかがっているそうです。OEMサプライヤーとしての立場もあるので自社ブランドについても遠慮があるようです。このへんが、日本人や中国人の儒教思想?的な発想ですね?
・作業工程では、検査段階で同じ不良が2回発生すると、ラインを止めて原因を調査・解決するそうです。
・品質管理は工程でもグループを作って競っているようで、結果はボーナス等に反映されるようです。
 

ASUSTek躍進の秘密?

 ASUSUTek社は、この5年間に急速な成長をとげました。急成長の理由について、今回の視察旅行の現地ガイドの陳さんの話では、優秀なコンピュータ技術者がアメリカから帰ってきて技術水準が向上したことと、社員の持ち株制度にあるそうです。
同社の給与水準は台湾の会社では平均的水準(約170万円?)だそうですが、持ち株制度によって入社後1年ごとに1株(台湾でも株価はトップクラスで1株250万円相当)が支給されるそうです。要するに、なるべく現金を支給しないストック・オプション士気高揚に活用しています。
このため50人の社員募集について、2500人のの申込があったそうです。
同社には、大学卒の掃除人もいるそうです?(高い給与のもらえる仕事です。)

 筆者注:中国人は高賃金指向が強く、工場労働者でも他社の賃金が1元でも?高
         いのを知ると、転職を考えるそうです。能力のある社員を賃金面でも引
         き止めておくことは、台湾・中国でビジネスを展開する場合の定石です。
 

約1時間ほどの工場見学であわただしい見学を終えて、次の訪問先の東日工業へと向
かいました。

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