東日工業股X有限公司の訪問

 台北の郊外にある東日工業は、主にPCのケースを製造する会社と説明を受けていました。社長が日本人で、開発力のある元気な会社と聞いていましたが、1時間以上の移動時間をかけて見学する価値があるのだろうか?と正直なところ思っていました。
なにしろ、あの有名なASUSTek社を見学した後ですから、ほかに見る物がある?のだろうかと・・・・。
 東日工業は、台北から西へ車で1時間の距離の桃園縣にあります。桃園縣の隣には、新竹縣がありハイテク工場・研究機関が集まっている地域でもあり、台湾のPC産業の中心部という位置づけとなっています。
高速道路を降りて工業団地に入り、日本ならどこにもあるような中小企業の工場でバスを降りました。狭い駐車場には乗用車以外にも2台のコンテナ車が止まっていて、私たちのバスが入ると満車状態です。
東日工業の工場事務所ビル 東日工業の駐車場にとまったバス
写真1:工場の事務棟といった感じのきれいなビルだ。
写真中央がエントランスになっている。スーパーOEMサプライヤーであることは聞いてなかった。
写真2:工場の正門から入ったバスは、製品のシッピング用コンテナーの後ろに止まった。コンテナーの後ろの工場でケースのプレス工程をやっていた。
社屋は2階建コンクリート製で、隣にある古い工場の方が大きいので付属の事務所のようにも見えて、ハイテクとは無関係のように思えてなりませんでした。
私たち訪問者は、2階の会議室に通されると狭いので立ち見の人が出るありさまです。
私たちの案内をしてくれたのは日本人社員の滝沢さんという方で、同社の説明を聞くうちに抱いていた先入観とは反対に、とんでもない会社であることがわかってきました。
SONY VAIOの説明をする滝沢さん VAIO のマイクロATX基板の特徴をはなす滝沢さん
写真3:滝沢さんは、発売前のSONY VAIOの技術説明をはじめた。この会社で共同開発された製品であることは、彼の説明で知った。SONYと対等にわたりあえるパワーがこの会社のどこにあるのだろうか?? 写真4:VAIOのマイクロATXのマザーボードを例にとり、今後のマザーボードのロードマップを知った。
滝沢さんは、SONYのコンセプトを知りつくしている。写真右のショーケースには有名メーカーのPCのケースがぎっしりと並べられてあった。
 滝沢さんの説明は簡潔・明瞭自信に満ちています。同社は、現在の社長(日本人)が台湾への工場進出のために買収した既存の台湾人の工場だそうです。おもにPCのケースを製造しているそうですが、納入先はIBM,HP、SUN(サンマイクロシステムズ:ワークステーションの最大手会社)、SONY、富士通、・・・などの世界の一流企業ばかりです。なるほど、会議室のガラスケースには、Aptiva,Contura,HP,SUN,DEC,... だれでも?知っている超有名ブランド品のケースがずらりと並んでいます。
この日、滝沢さんが会議室で話してくれたのは、98年7月に日本で発売されるSONYの「VAIO(バイオ:ミニタワーケース・MicroATX )」についてでした。
同社では(VAIOについては)PCのケースだけでなく、OEMでケース内部(CPUとメモリーを除き)を組み立てて、ケース表面のプラスチックカバーの取付けを残すだけの状態で、日本の工場へ送るそうです。
入口の駐車場にあった2台のコンテナーは、このための物だったようです。

工場見学

 つづいて、同社のケース製造工場を見学しました。工場内は、日本にもある一般的な3Kの製造現場す。
わたしはガソリンスタンドにいた当時、工業用潤滑油や工作油をいくつもの工場に納めていた関係で、関係者立入り禁止の工場現場に出入りしていましたが、ここは「タネも仕掛けもない優良なプレス工場」です。
ただし、感的に儲かっている忙しい会社であることは工場の気配から分かりました。
 

プレス最初の打ち抜き工程 打ちぬいた鉄板を片手に説明する滝沢さん
写真5:プレス機の右側の裁断された鉄板は、左のように打ち抜かれてケースの展開図のようになる。
プレス機の稼働率が高いことがうかがわれる。
写真6:最初の工程で打ち抜かれた鉄板を手に、説明はつづいた。

 
 
3連のプレス機の写真 ねじなどの穴を開けていく 鉄板のふちの曲げ工程の写真
写真7:3台のプレス機が、自動でリレー式に穴あけ工程を処理して行く 写真8:穴あけ、フォーミング(曲げ加工)の工程の終わりに近い工程。
今日は休みなので動いていない最後のプレス工程 あと1工程で完成のケース
写真9:ケース加工の最後の工程のプレス機。
今日は稼動していない。(社員旅行で休止)
写真10:見学で見せてくれた工程での仕掛品。
ケースらしくなってきた。

プレス加工工場にとってプレスの金型こそが命ですが、話を聞く限りプレス加工ではどんな注文にも応じられるという余裕が感じられました。プレス工場での一番肝心な金型についての質問では、ははぐらかされてしまいましたが、彼にとっての守べき秘密はほかのことにあるように感じました。
工場内では自由に写真撮影を許してくれました。
 

SUNのワークステーションのケースを塗装するライン 工場の片隅にあった仏壇のような神棚の写真
写真11:これは、SUNのワークステーションのケースに塗装をする工程だ。工場の1階でリフトにフックされ、2階の工程に送られて行くところを撮影した。 写真12:工場1階の片隅(管理者のデスク?)に中国式の神棚が置いてあった。ハイテクマシンの製造をドラゴンが見守っているようだ。なんだか安心した?
2階の工場に行くメンバーたちの写真 工場内の風景
写真13:滝沢さんの案内で工場2階の工程を見学に行く。
ゆっくりと流れて行く.
それにしても、第一印象を裏切る広さだ!
写真14:工場1階の風景。仕掛品の置き場は広く、そのさらに奥には別のプレスラインがあるようだ?階段はどこだ?
(写真の女性は、ガイドさんです。ねんのため・・・。)
工場2階の塗装工程の写真 塗装前の目視検査
写真15:工場2階の塗装工程の通路を行く。右側の鉄板の壁の内側をリフトは奥の方へ向かって進んで行く。左上のリフトは、乾燥を終わり次のライン(手前)に向かって進んでいる。 写真16:塗装前の目視検査と確認をしているところ。
リフトは、左に向かってゆっくりと進んでいる。
工場2階の別の作業工程(1) 工場2階の別の作業工程(2)
写真17:工場2階の別の作業工程(1)
比較的古いプレス機械のようだ。工場の2階に設置するのだから基礎工事はたいへんだったはずだ?
写真18:工場2階の別の作業工程(2)
小物のプレス工程のようだ?天井を注目!

東日工業ではPC関係の製品を製造する前は、日本の大手メーカーの仕事でエアコン心臓部のコンプレッサー(精度の高い加工が要求される)の部品製造をしていたそうです。
もともと精密加工技術に関しては優秀な工場であったようです。
わたしの見る限り、この工場には秘密はないようにも思われました。
 

SONY VAIO をはこづめする外国人労働者の方 はこづめ作業の写真
写真19:ほぼ完成状態でSONY VAIOをシッピングのためにパッキング(梱包)しているようす。 写真20:パレットのダンボール箱に収められて、コンテナーで東金(千葉)へ向けて運ばれる。日本でCPU,メモリー、カバーを付ければ、VAIOは完成だ。

訪問したこの日は同社の社員旅行だったので、私たちのために外国人(東南アジア人)労働者を動員して生産工程を動かして見学させてくれました。Sun Microsystems のマシンケースの塗装工程と、VAIOの最終箱詰め工程を見学しました。
 

東日工業のオリジナルのケース
写真21:向こう側のテーブルにあるケースは、東日工業のオリジナルのマイクロATXケースだ。当然だが、SONYのコンセプトが盛り込まれている。秋葉原の九十九電機で入手できるそうだ。

  今回、東日工業が社員旅行で工場が休止であるにもかかわらず、わたしたちの工場見学が実現したのは単に「九十九電機さんに製品をOEM供給している」という理由からではなく、視察団長の後藤さんの熱意が滝沢さんを動かしたかからであることを本人から聞きました。後藤さんは、中国的人脈パワーを持っているようだ!電脳大師後藤さん!
滝沢さん、後藤さんありがとう!

スーパーOEMメーカー

 再び、会議室に戻り滝沢さんの話を聞きました。彼の話は、たいへん興味深いものでした。同社は、OEM先の会社と新製品の商品化に関わっているそうです。
同時に複数の取引先と商品化を進めるので、それぞれのチームごとに工場内にプレハブ小屋を建てて、部外者立入り禁止で機密を守るそうです。商品化よりも機密保持の方が難しいそうです。
取引先には絶大な信用があるようで、共同の商品化だけでなく自社で独自に試作したマシンをOEM製品として提案式の売込みをして成功しているそうです。
わたしたちは、もしかするとPCメーカーがほとんど開発費をかけず、東日工業が提案したマシンを使っているかもしれません。
通された会議室に展示してあった一流メーカーのケースは、OEMメーカーとしての歩んできた数々の勲章のようにも思えました。
この会社は、インターネットの Web Page さえも出さない影武者だ!

 *** 滝沢さんのはなしの要約 ***

同社は、中国大陸に2000人規模の製造工場を作ったそうです。台湾の労働者の賃金は月7万〜13万円ぐらいですが、中国本土では、賃金+経費で一人当たり月1万円ですむそうです!この話を聞いて、金太郎飴のように同じ物を大量生産する産業は、日本の国内生産ではコスト面だけでもビジネスとして勝ち目はない!と実感しました。
PCのハードウェア製造産業は、もはや日本に帰ってこないことを確信しました。
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そのほかにも、滝沢さんの話は台湾パワーや「日本の産業空洞化」「円安」におよび、日本の外からでないと見えない日本の姿や、中国側から見た日本の直面する問題点・・・・などを理路整然と評価・批評してゆきます。
OEMの供給元の会社というので、苦労話が中心ではないかと思っていましたが・・・・こんな面白い話が聞けるとは思いませんでした。
台湾の経済情報やパソコン産業の情勢は、日経新聞や日経ビジネスを読んで頭ではわかっているつもりでしたが、現場サイドの方から聞く実情には説得力がありました。
わたしは、彼の説明で工場見学をしていて、台湾PC産業の躍進の秘密は、開発力・マネージメント(経営)であることを確信しました。

 あっという間の1時間でしたが、滝沢さんのパワーに圧倒された1時間でした。
帰りのバスの中で今回の工場視察では、最後の東日工業がいちばん手応えがあると思いました。
日本の現状についての彼の意見は(台湾から見える日本に歯がゆさがあるようで?)一段とトーンが高かったような気がしました。
 特に印象に残ったのは、メンバーの一人の「OEM製品の製造を注文するには、最低限の数量は?」という質問に、彼は「まず電話をかけることだ、COMPUTEX の企業リストを見てかたっぱしから電話を掛ければ、数社に1社には年配の社員で日本語が話せる者が居るので、直接交渉すれば解決するだろう・・・・。」ということでした。台湾の企業は少種多量生産だけでなく、顧客の少量注文にも柔軟に対応できる余裕があるようです。
おそるべし!

ツアーの団長の後藤さんのいちばん見てほしかったのは、東日工業だったのだと思います。
なんだか、この日は滝沢さんに励まされて帰ってきたような気がします。

 この晩はホテルに帰って、夕食は中華料理店の青葉餐廳?でとりました。うまかった!!やすい!
食後は、ホテルの隣のビルの「太平洋 T−Zone」の店内を見学しました。同店の広い店内は、秋葉原のT−Zoneミナミ のような感じです。円安のためか?特に安いと感じた商品はありませんでした。台北の中心オフィース街にある店に秋葉原並の価格を期待するほうが間違っているようです。反省!

 私も台湾の文化や生活に接するうちに、だんだんと違和感がなくなってきました。
滞在2日目なのに、時々出会う強烈で独特な「香料の匂い」(セブンイレブンの店内で売っている「烏龍茶卵」ーゆで卵をフタのない炊飯器で、ウーロン茶でグツグツとゆでて売っているーはすごいにおいだ!)にはメゲますが、漢字の文化圏ということで、言葉がまったくダメなのに親近感を持てます。
料理もうまい!台北には周富徳や陳健一の海賊版?がたくさんいるようだ。
自分はアジア系の顔なので、鼻がきかなくて中国語さえできれば現地で不自由なく暮らしてゆけるようなような気?がしました。
どうも、現地人には私が日本人に見えないようです・・・・。

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